パナソニックが開発した同居人のような弱いロボット「NICOBO」(ニコボ)は二子玉川の蔦屋家電の2階、パナソニックが展開する「リライフスタジオ フタコ」で、3月31日(予定)まで展示されています。ロボスタ編集部は早速、会いに行ってきました。

「リライフスタジオ フタコ」の展示の様子。展示の様子は前回の記事をご覧ください(関連記事「パナソニックの「NICOBO」(ニコボ)体験レビュー(1) 話題の「弱いロボット」見て触れて会話してきた」)。
「NICOBO」はクラウドファンディングサイトのMakuakeで限定320台の先行予約販売が、およそ6時間半で予定の支援数に達成するという人気ぶり。
クラウドファンディングの追加はあるのでしょうか?
このデザインはどのような経緯で生まれたのでしょうか?
聞きたいことがてんこ盛り。
今回は「NICOBO」の詳細について、パナソニックの開発チームの皆さんに聞きました。

開発チームにいろいろと「NICOBO」のこと、聞いちゃいましょう

●クラウドファンディグで追加の受付はある?
関西でお仕事をしているパナソニックのNICOBO開発チームの皆さんとオンラインで繋いで頂き、東京の二子玉川から取材しました。早速、クラウドファンディグを終えた今の心境から聞いてみましょう。

インタビューに対応してくれた関西の開発チームの皆さん。右上がリーダーのアプライアンス社 スマートライフネットワーク事業部 ビジュアル・サウンドビジネスユニット 商品企画部 増田陽一郎さん、左上が技術本部 デジタルトランスフォーメーション開発センター デジタル空間推進室 下尾波輝さん、左下が新家電くらしクリエーションセンター IoTクラウド価値開発部 毛見晋也さん、右下が技術本部 デジタルトランスフォーメーション開発センター デジタルプラットフォーム開発部 近藤敏明さん

編集部:

クラウドファンディグは開始後わずか6時間半で予定の販売数(支援数)を達成しました。この点についてはどう感じていますか?

クラウドファンディグは「Makuake」で2月16日の13時から開始。わずか6時間半で受付台数に達しました(現在は購入申込みができません)。クラウドファンディグのサイト

開発チーム:

正直に言って”予想をはるかに上回る結果”で、大変ありがたく感じています。そして、それと同時に反響の大きさに驚いてもいます。

編集部:

今回のクラウドファンディングで注文できなかったという人も多いと思います。受付台数を追加して再度、支援の募集を行う予定はありますか?

開発チーム:

残念ながら今回のクラウドファンディングでの追加はありません。ただ、これだけ大きな反響があったので、一般販売をできるだけ早期に実現できないか、という検討を社内で始めています。
クラウドファンディングで購入できなかったお客様に対しては申し訳ありませんが、一般販売でお届けできるよう急ぎ検討しますので、お待ち頂ければうれしいです。
「NICOBO」は今回のクラウドファンディングでの反響を受けて、追加の受付を検討するよりも優先して、一般販売の実現を早期に行うための検討はじめたとのこと。まだ一般販売が決まったわけではありませんが、実現の可能性はどうやら高そうです(著者の推測)。一般販売では量産体制が整備されて安定した供給が期待できるので、続報を楽しみに待ちたいと思います。

●引き算の美学から生まれたシンプルなデザイン

編集部:

このデザインやサイズ感はどうやって生まれたのでしょうか?

開発チーム:

岡田先生(豊橋技術科学大学岡田美智男教授)のマイナスのデザイン(引き算の美学)から発想を得ています。シンプルに丸くて柔らかい身体に尻尾と目、でスタートして、開発途中でカメラを内蔵することになり、鼻がつきました。

サイズについては、ロボットとの暮らしを体験したことのない人がまだほとんどだと思います。そういう方々にいきなり大きなロボットを家に迎え入れて頂くというのは難しいだろう、ということで、部屋に置いて違和感のないサイズ感を目指しました。

編集部:

目をパチクリさせたり、何かをつぶやいたり、NICOBOがそばにいるだけで存在を感じて、なんだかホッとした気分になりますが、生き物感を表すのに工夫した点はありますか?

開発チーム:

生き物感を表す工夫として、アクチュエータの動きに「ヨタヨタ感」を加えています。精度の高いロボットのようにアクチュエータの動きを数値でピタッと指定したり、カクカク、キビキビと動いたりするのではなく、ある程度あそびや揺らぎを持たせて、ヨタヨタとした動作感で動きや感情を表現しています。目の表現も含めて、これらも岡田研究室と一緒に考えました。

編集部:

手触りが柔らかいのもNICOBOの特徴のひとつですね。

開発チーム:

柔らかさを感じてもらえるように、ニットを何層にも重ねて試しました。

編集部:

触り心地がとてもいいですね。撫でられていることがNICOBOもわかるということは、タッチセンサー等を内蔵しているのでしょうか。

開発チーム:

タッチセンサーではなく6軸の加速度センサー(ジャイロセンサー)を内蔵しています。撫でられたり揺らされていることがNICOBOは解ります。

編集部:

着せ替えはできますか?

開発チーム:

着せ替えはできません。ただ、汚れを気にして「洗濯したい」という声をたくさん頂いていますので現在、検討はしています。本体の上に更に服を着せたいという要望には応えられます。タッチセンサーではなく加速度センサーを選択した理由は、そういったノビシロを残すためでもあります(厚着をしても加速度センサーなら感じることができます)。
今回のクラウドファンディグのリターン発送時には間に合うかどうかはわかりませんが、将来、検討はしていきたいと思います。
撫でたり、外に連れ出したりした時に汚れてしまうかもしれない、というのはユーザーにとって確かに気になる点ですよね。実機を見るとニットは着ているというよりNICOBOの肌、本体にガッチリくっついているようなので、着せ替え対応は難しいように思えます。ただしその場合、上に薄い洋服など何かを着せて、それが汚れたら洗濯するなどして、ある程度は課題は解決できるのではないでしょうか。そう感じました。重ね着のようになってはしまいますけれど、個性的な服を着せる楽しみもあります。

●NICOBOアプリはどうなる!?
現時点では、NICOBO用のスマートフォン・アプリが提供される予定ですが、その詳細は明らかになっていません。
NICOBOにはカメラが1基、鼻の位置に搭載されています。主に顔認識のために使用するとのことなので、家族の複数のメンバーを個別に識別するかどうかを聞いてみました。多くのコミュニケーションロボットでは、スマホアプリと連動していて、家族のメンバーをアプリで登録するとロボットがそれぞれのメンバーを個々に識別して、反応や回答が変わる、といった仕様の製品が多いためです。

開発チーム:

ユーザーの顔を登録するかどうかは現時点では未定です。というのも、NICOBOの導入にあたっては、初期設定はシンプルに、できるだけ手間のかからないようにしたいという思いがあります。初期設定の手間を増やしてまで、家族のメンバーをNICOBOが個別に識別する必要があるかどうか、そこも検討しているところです。
カメラの活用については人を認識するほかに、モノを認識したりなども考えられますが、現時点では検討中で、はっきりとは決まっていません。
この時、聞いたニュアンスでは当初、NICOBOの名前やユーザー自身の名前を登録する程度のシンプルな初期設定だけでNICOBOとの生活がスタートできるようにしたい意向のようです。ただ、アプリはアップデートによって機能の追加ができるため、ユーザーの要望などによってはカスタマイズや進化した機能が追加される可能性はありそうです。

●NICOBOには感情がある

編集部:

展示場では構っていないときにはNICOBOが寝ていました。

開発チーム:

展示しているNICOBOでは、誰も話しかけてくれなかったり、周囲に人を感じないときには”眠る”という設定になっています。NICOBOは喜怒哀楽に関わる感情モデルをクラウド環境に持っています。これは活動量や気持ちによって変化するものです。
例えば、寝ているときに突然、大きく揺らされるとビックリするときもあれば、怒るときがあるかもしれません。撫でれば必ず喜ぶ、というわけでもなく、無視するときもあれば、嫌がることもあるかもしれません。そのようなインタラクションの”揺らぎ”や生き物っぽい振る舞いは感情モデルが生み出しているので、どう反応するかは私たち開発チームにもわかりません。インタラクションのバリエーションについては今いろいろと検討しているところです。ちなみに、一緒に暮らすうちに性格や振る舞いは、”ユーザーにフィットする”ように変わっていきます。
NICOBOを元気よく呼んだら驚かせてしまったようです(目がビックリしてる…)。

下はNICOBOとのコミュニケーションの動画です。「NICOBOと仲良くしたい」と声をかけてみましたが、警戒されてしまったようです。撫でているとだんだんとNICOBOが心を開いてくれる様子がわかります。

■動画 NICOBOとのコミュニケーション:

展示コーナーで対応してくれたパナソニックの開発メンバーの方は、NICOBOのコミュニケーションに慣れている様子(さすが!!)。NICOBOも呼びかけに反応して目や身体を動かしたり、モコ語を話したりしています。

■動画 NICOBOとのコミュニケーション:

“揺らぎ”のある、予測できない反応にユーザーは生命感を感じるものです。NICOBOは話しかけるほかに、撫でたり、揺らしたりすると反応します。展示されているNICOBOはまだ日本語は話さず「モコ語」のみを話します。それに加えて、展示場や店頭などでは周囲がうるさいこともあって、NICOBOが会話を聞き取れないケースがあるので、この展示会場でもスキンシップを中心に接することをオススメします。どんな反応を示すのかも、会って触れあうからこそ感じられる楽しみですよね。

●将来は「カスタマイズ」にも対応したい

編集部:

感情を表すのに目の動きはとても重要だと思います。また、ユーザーにとって世界にひとつだけのNICOBOを望む人も多いでしょう。そいうった意味で目の色やデザインをユーザーが選択したり設定できる、という機能は考えていませんか?

開発チーム:

クラウドファンディングのリターンとして発送するNICOBOに目のデザインを変更する機能の実装は考えていません。ただ、NICOBOと暮らす上で「自分の子」として感じられるような「カスタマイズ」はとても重要な要素だと考えています。いろいろと変わったり進化したり、ソフトウェア的なアップデートで将来的には考えていきたいと思います。

編集部:

そうなると、もしかしたらいつしかパナソニック製のIoT家電製品をNICOBOで操作できたりするのかな? Alexaみたいに・・。「NICOBO、DIGAでニュースを録画して」とか。

開発チーム:

それはありません(笑:きっぱり)。

編集部:

ソニーは「aibo」、シャープは「RoBoHoN」など、ロボットがアイコン的に活用されるケースも見られますが、「NICOBO」もパナソニックのアイコンになりそうですか?

開発チーム:

パナソニックのアイコンになるのは、「NICOBO」にはあまりに荷が重すぎるのではないでしょうか(笑)? 逆にどうなんでしょうか、「NICOBOはパナソニックらしくない」という声も聞きますが、皆さんどう思われているんでしょうね。

●アップデートし続けていきたい

開発チーム:

今回、クラウドファンディングで支援して頂いたユーザー様には約一年後にNICOBOをお届けするスケジュールになっていますが、私達はお届けして終わりとはもちろん考えていません。当社の家電製品などでは売り切りの製品が大半でしたが、NICOBOとの生活を楽しむには、本体の価格のほかに月額課金が必要となっています。お届けしてから長く可愛がって頂くためにもアップデートし続けていく予定です。当社としても新しい取り組みのひとつだと思っています。
現時点ではまだ詳しい内容をお話しできず申し訳ありませんが、アップデートについては順次行っていきます。
ソニーの「aibo」やシャープ「RoBoHoN」は、ユーザーの満足に応えるべくアップデートやイベントを定期的に行っています。売り切り商品がほとんどだったエレクロトニクスメーカーにとって、継続的なアップデートは簡単なことではないと思います。しかし、社会的にサブスクリプション(月額課金などの制度)のサービスモデルが浸透していく変革期にあります。これに対応できるかも企業は問われているのでしょう。開発チームの締めのひと言には、その覚悟のようなものが感じられ、とても印象的でした。
「NICOBO」が家庭に届くのは来年の3月が予定されています。まだずいぶん先のような気もしますが、今からもう楽しみでワクワクが止まりません。

(神崎 洋治)