エレコム株式会社は従来のパソコンにPCI拡張ボードとして装着し、量子アニーリングに特化した機能を発揮する「量子FPGAボード」を公開した。公開したのは開発中のもので、2021年末に試作デモ機が完成予定としている。
現在のPCでは、長時間かかったり、計算が求められないような膨大な「組合せ最適化」問題に対して高速に処理できるようになる量子アニーリング技術が、将来は手軽に導入できるようになることが期待できる。「組合せ最適化」問題は金融や保険分野のほか、従業員のシフト作成業務などでも活用が待たれている。

エレコムが公開したのは、東京ビッグサイト青海展示棟で開催中の「第1回 量子コンピューティングEXPO【春】」の同社ブース内。開発しているのはエレコムグループのなかでも先端技術の開発を行っている親会社のディー・クルー・テクノロジーズ(D-CLUE)だ。

業務用プリンター向けの高速転送用および画像処理用の特殊CPUの開発を行い、2017年には理化学研究所のスパコン用プロセッサー開発を受注するなどの実績を持つ。

現在は、用途特化型のイジングマシン方式の量子コンピュータを独自のアイデアで開発している。今回の出展では2021年度中の販売を目指し「汎用PCに搭載することで量子コンピューティングを可能にする」FPGAボードを公開した。

ブース内ではミニプレゼンテーションが行われ、D-CLUEのCTO、長澤達也氏は「(FPGA拡張ボードによるものは)量子コンピュータではない、と言われればその通りだが、私達は量子コンピューティングのひとつアニーリングやイジングマシンを身近なコンピュータやスマートフォンでも使えるような世界を実現したい、という思いがある。目指すのは手の平で使える量子コンピューティング」と語った。

高性能を追い求める量子コンピューティングのほかに、FPGAを使って量子コンピューティングを手軽に早期に汎用PCなどの普及しているデバイスで実現する市場を選択。「スマートフォンで量子コンピューティングが実現する事態が来るかもしれない」(長澤氏)

■動画 汎用PCでの量子コンピューティングを実現!:

●現在の量子コンピューティングの状況
2014年にGoogleが量子コンピューティングに参入し、評価性能面でも従来のコンピュータを凌駕するという結果が先行して話題になった。量子コンピュータには量子ゲート型(汎用型)と量子アニーリング型があり、量子ゲート型の実用には数十年かかると予想されている。量子アニーリング型は現在のコンピュータが得意としている四則演算などが苦手で、活用の用途はごく一部に限られる(その領域内での性能は素晴らしい)。また、現在の量子コンピュータは、動作環境が絶対零度(超低温)以下であったり、大型の設備が必要など、実用が近いと言われている量子アニーリング方式であってもまだ実用段階に至っているとはいい難い。
とはいえ、量子コンピュータの潜在能力の期待は大きいため、「組み合わせ最適化」に限って、量子コンピュータを模倣した汎用PC(従来のパソコン)を使ったアニーリングの実現が急がれている。
具体的な方法としては、GPUやFPGAを使うもの、専用のASICを用いるもの、ソフトウェアだけで実現するものなどがあり、今回のエレコムの発表は、FPGAを搭載した拡張ボードを汎用PCに増設することで実現するアプローチをとりたい考えだ。
なお、価格は未定だが、現在は100万円を超えるものになってしまうが、製品化の際は数10万円を目指したいとしている。
「第1回 量子コンピューティングEXPO【春】」は、2021年4月7日(水)〜9日(金)まで開催されている。

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