デフォルトフォントは「印象のなさ」が最大の魅力?

パソコンやスマートフォンを印象づけるデザインのひとつが「デフォルトのフォント」だ。フォントはPCやスマートフォンを使う上で欠かすことができない。デフォルトフォントは目立ちすぎてはいけない。読みやすく、判別性が高く、大きいサイズでも小さいサイズでも読める必要がある。そして、適度な横幅を持っている必要がある。

日本語のように全角1文字の横幅がどの文字もほぼ同じというケースでは問題にならないが、英語のようなフォントでは1文字当たりの横幅が重要だ。フォントの幅が広すぎると1行に入る文字数が少なくなる。かといって、幅を狭くして1行に多くの文字を詰め込みすぎると読みにくくなる。

Microsoftは現在、Calibriフォントをデフォルトのフォントとして採用している。上記のスクリーンショットはCalibriを使ったMicrosoft Wordだ。見慣れたフォントである。しかしMicrosoftは、このデフォルトフォントを変更する時期に来たと考えているようだ。

Microsoftは4月28日(米国時間)、「Beyond Calibri: Finding Microsoft’s next default font – Microsoft 365 Blog」において、Calibriに代わるデフォルトフォントを検討していることを公表した。既に代替候補のフォントが5つ開発されており、ユーザーに対して意見を求めている。

Calibriは2007年にデフォルトフォントとして導入された。それまでは、Times New Romanと呼ばれるセリフ書体のフォントがデフォルトのフォントだった。Calibriはサンセリフ書体のフォントだ。日本では、セリフ書体は明朝体、サンセリフ書体はゴシック体だと考えるとわかりやすい。現在は、ゴシック体がMicrosoftのデフォルトのフォントということになる。

Microsoftはデフォルトのフォントについて、「デフォルトフォントはその印象のなさが最も注目される。普段フォントについて考えることはあまりないが、それこそが最大の魅力だ」と、その考えを説明。そして「まわりの人達や世界が歳を重ねて成長するように、表現方法も成長しなければならない」と説明し、今がデフォルトフォントについてそのタイミングだと述べている。

推しフォントはどれ? 5つの次期デフォルトフォントを試す方法

Microsoftが候補として挙げているのは、次の5つのフォントだ。

Tenorite

Bierstadt

Skeena

Seaford

Grandview

この5つのフォントはMicrosoft Officeプロダクトで試用できるようになっている。どのアプリケーションで使用できるかは「Cloud fonts in Office – Office Support」に説明が掲載されている。ただし、候補のフォントを使用するにはMicrosoft 365のライセンスを持っている必要がある。

なお、Windowsプラットフォーム以外でも試せるので、Microsoft 365ライセンスを持っているならMacからもiOSからも試せる。Webブラウザからも使えるので、試してみるのはかなり簡単だ。本稿執筆時点での、候補のフォントの対応状況は次のようになっている。

なお、Microsoft Officeのアプリケーションを使う場合、設定の「プライバシー」から「オプションの接続エクスペリエンスを有効にする」にチェックが入っている必要がある点に注意しておこう。

次期フォントの選定は向こう数カ月かけて行われるとされており、Microsoftはユーザーに対して「MicrosoftのTwitter」などで意見を寄せてほしいと呼びかけている。Microsoftがどこまでユーザーの声を反映させるつもりかはわからないが、少なくとも向こう数年間にわたってデフォルトで使われるフォントに自分の意見が反映されるチャンスかもしれない。

なお、デフォルトフォントの選定が終わったあとも、候補として挙げられているフォントは使い続けることができるようだ。推しフォントがデフォルトフォントに採用されなかったとしても、そのフォントは使い続けることができる。

次に、それぞれのフォントを使ったMicrosoft Wordのスクリーンショットと、Microsoftの発表に掲載されている説明を要約したものを掲載しておく。詳しくはMicrosoftの文章を参照して欲しいのと、実際に自分で使ってみてフォントを味わってもらえればと思う。

Tenorite

伝統的なサンセリフ体(日本語フォントでのゴシック体)のような全体的な外観を持ちながら、より暖かみのある親しみやすいスタイルのフォント。大きなドット、アクセント、句読点などの要素によってスクリーン上で小さいサイズで表示させた場合でも快適に読むことができ、また、くっきりした形と幅広の文字によって全体的に開放的な印象を与えている。

Bierstadt

20世紀半ばスイスのタイポグラフィに着想を得た精密で現代的なサンセリフ書体。シンプルさと合理性を可読性の高い形で表現した多目的書体であり、特に認識しやすいストローク終端デザインによって相互配置と全体としての統一性を実現している。

Skeena

伝統的なセリフ書体(日本語での明朝体)をベースにした「人間のための」サンセリフ書体。ストロークは太さに変化があって太い部分と細い部分のコントラストが目立ち、多くのストローク終端には独特のスライスが施されている。長い文書の本文や、プレゼンテーション、パンフレット、テーブル、報告書などにおける短い文書に適した書体。

Seaford

オールドスタイルなセリフ書体のデザインをベースにしつつ、心地よい親しみやすさを喚起するサンセリフ書体。緩やかで有機的な非対称のフォルムが文字の違いを強調し可読性を高め、かつ、より認識しやすい単語の形を実現している。

Grandview

ドイツの典型的な道路や鉄道の標識に由来するサンセリフ書体。遠くからでも劣悪な環境下でも読みやすいようにデザインされている。本文用にデザインされたフォントで、高い読みやすさの品質はそのままに長い文章を読むための微妙な調整も行われている。

Calibriと5つのフォントを比較

次に、Calibriと5つの候補フォントを使った比較用のスクリーンショットを掲載しておく。

「よいデフォルトのフォント」というのは、その人が使用するデバイスに何を求めるかによって変わるし、同じデバイスであっても使用するフォントサイズを変えた途端に変わることもある。よく使うアプリケーションが変われば「デフォルトであってほしい」という思うフォントも変わる。さらに好みの問題もあり、本人にとって同じ可読性だったとしても、好みで選ぶ対象は変わってくる。視力や乱視、老眼といった条件もデフォルトフォントの選定に影響する。自分にとって見やすいフォントが、ほかの誰かにとっては読みにくいことだってあるのだ。世界で最も多く使われているPCのオペレーティングシステムはWindowsだ。このWindowsのデフォルトフォントが変わるというのは、ひとつのお祭りといえるかもしれない。この機会にデフォルトフォントを見直し、意見を投げてみてはいかがだろう。