オリンピックでは、出場選手から出る「名言」も楽しみの1つだ。一つの道を極め続けた日本人オリンピアンの言葉から勇気をもらった人も多いだろう。新型コロナウイルスで日本や世界が大変な状況である今、出場選手の名言から私達が学ぶべきことは、どのようなことか。

■どんなに柔道で頑張ってチャンピオンになったとしても、人生のチャンピオンになれるかどうかは分からない。大事なのは頑張ったことを人生に生かすこと──山下泰裕

1984年開催のロサンゼルス五輪において、柔道の男子無差別級で金メダルを取ったのは山下泰裕氏だ。現在は日本オリンピック委員会(JOC)の会長を務め、コロナ禍における東京五輪の開催に向けて悪戦苦闘の日々が続いている。

その山下氏の代表的な名言と言えば、「どんなに柔道で頑張ってチャンピオンになったとしても、人生のチャンピオンになれるかどうかは分からない。大事なのは頑張ったことを人生に生かすこと」だ。

ある1つのことで頂点に立ったとしても、満足のいく人生が約束されているわけではない。生きている以上、さまざまな困難が訪れる。そんなときこそ、頂点に立とうと頑張ったことを生かそう、と山下氏は説く。

1つのことを頑張り続ける中で得た「諦めない力」や「継続する力」は、人生のハードルを越えるのにきっと役立つはずだ。

■負けるとか、ダメだって気持ちは一切なかったです──古賀稔彦

山下氏と同じく柔道選手である古賀稔彦氏は、バルセロナ五輪の金メダリストだ。「平成の三四郎」という愛称でも親しまれた古賀氏だが、今年2021年の4月、53歳の若さで死去した。その古賀氏も、今後も語り継がれていくような名言を残している。

その名言が「負けるとか、ダメだって気持ちは一切なかったです」だ。古賀氏はバルセロナ五輪の直前、左膝じん帯を損傷するケガを負った。そして、試合当日まではずっとベッドで過ごした。しかし、だからといって試合で負けるという気持ちは一切持たなかったという。

古賀氏が直前のケガという逆境においても気持ちを強く持てたのは、それまで支援してくれたさまざまな人の思いに報いたいという気持ちや、それまでの努力の積み重ねを無駄にしたくない、という思いがあったからだそうだ。

何かを諦めてしまいそうになったときは、ぜひ古賀氏のこの名言を思い出してみてはいかがだろうか。自分を支援してくれた人達の顔、そして自分が重ねた努力を思い出せば、諦めずにもう少し頑張り続けることができるかもしれない。

■初めて、自分で自分をほめたいと思います──有森裕子

「初めて、自分で自分をほめたいと思います」という名言は、マラソン選手の有森裕子氏の言葉だ。1996年に行われたアトランタ五輪の女子マラソンで有森氏は銅メダルを獲得し、その直後のインタビューで涙ながらにこのフレーズを口にした。

有森氏が「自分で自分をほめたい」と語ったのは、五輪という大舞台で満足がいく成績を残せたからではない。アトランタ五輪の4年前のバルセロナ五輪で、有森氏は銀メダルを獲得している。つまり、前回大会に比べてメダルの色が1つ落ちたのにも関わらず、このフレーズを口にした。

ではなぜ、有森氏は「自分で自分をほめたい」と語ったのか。その理由はこのフレーズの前に口にした言葉から読み取れる。「終わってから、なんでもっと頑張れなかったんだろうと思うレースはしたくなかった」「今回は自分でそう思ってない」。納得がいくところまで頑張ったことが、この名言を生んだのだ。

結果が求められる現代社会だが、本当に大事なことは自分に納得がいくこと──。そんなことを考えさせる名言である。

■海外オリンピアンの有名な名言は?

この記事では、日本人オリンピアン3氏の名言を紹介してきたが、海外のオリンピアンもさまざまな名言を残している。有名な名言としては、体操選手として1976年開催のモントリオール五輪で金メダル3個を獲得したナディア・コマネチ氏の以下のフレーズがある。

「私は、怖いという理由で挑戦から逃げることはない。むしろ挑戦に向かって突き進む。なぜなら、恐怖を逃れる唯一の方法は、自分の足で恐怖を踏みつけることだからだ」

これは、スポーツ以外でも通じる考え方だ。日常生活を送っていると、さまざまな不安や恐怖を感じてしまうことがある。しかし、それから逃げていてはいつまで経っても先に進めない。大切なことは、逃げずに克服しようという気持ちではないだろうか。

■東京オリンピックではどのような名言が飛び出す!?

東京オリンピックは、今年2021年に延期された。新型コロナウイルスの感染再拡大で開催自体が危ぶまれているが、もし予定通りに開催されれば、どのような名言が飛び出すのだろうか。きっと、コロナで練習環境が制限される中でも必死に努力を続けた選手から、後世に語り継がれる名言が飛び出すはずである。

五輪開催中は日本人選手の成績だけではなく、オリンピアンがどのようなことを語るかにも注目すれば、よりオリンピックを有意義に楽しめそうだ。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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