ニューヨーク発の人気ファッション・ブランド、ケイト・スペード(Kate Spade)は、インスタグラムとTikTokの両方を活用しているが、それぞれのアプローチはまったく異なる。

インスタグラムについては、ケイト・スペードは現在300万人近くのフォロワーを集めており、美しい画像を使って、広告キャンペーンを行ったり、製品に関するニュースなどを投稿している。一方、同社のTikTokアカウントには、これまでに動画が4本しか投稿されておらず、フォロワーも3000人以下だ。しかし、CMOのジェニー・キャンベル氏によると、同ブランドがいま期待を寄せるマーケティングチャネルはTikTokだという。

ただ、先日スタートした夏のキャンペーンでケイト・スペードが活用したのは、主にインスタグラム、Facebook、ピンタレスト(Pinterest)、そしてHulu(フールー)などのコネクテッドTVといったメディアだった。それでも、同社がTikTokに寄せる期待は大きい。その理由はTikTokのオーガニックパフォーマンスの高さだ。実際キャンベル氏によると、現在TikTokのオーガニックパフォーマンスは、驚異的に上昇しているという。実際、あるキャンペーンでTikTokを活用したところ、でキャンペーン開始から最初の24時間で、関連ハッシュタグ「#KateSpadeNYHappyDance」は、9億5000万回以上閲覧された。

TikTokの性質を理解した施策

ケイト・スペードがTikTok上で生み出したUGCは、主にファンによるオーガニックな投稿と、トドリック・ホール(フォロワー110万人)やケリー・アードマン(フォロワー190万人)のような、同社が広告契約を交わしている、インフルエンサーによる投稿から成り立っている。オーガニックなUGC、つまり前者に関してはインスタグラムのそれよりも多いため、TikTokの方が多くの注目を集めていることが分かる。実際「#KateSpade」のハッシュタグが付与された動画は、TikTokで1億回近く投稿されており、インスタグラムでは600万回以下しか投稿されていない。ちなみに、ケイト・スペードのインスタグラムアカウントがローンチされたのは2011年2月。一方、TikTokアカウントがローンチされたのはこの5月だ。

「ソーシャルプラットフォームの活用には、それぞれのプラットフォームごとに、最適なコンテンツを届ける必要がある。私たちのソーシャル戦略は、この考え方を重視している」とキャンベル氏は述べる。「インスタグラムのフォロワーは、美しい製品画像やストーリーテリングを楽しみたいと思っているが、YouTubeの視聴者は、エンターテイメントの一形態として、より長い形式の動画コンテンツを求めている。そしてTikTokに関しては、コンテンツの『面白さ』が求められる。というのもTikTokでは、そのユーザーがエンゲージしているクリエイターのコンテンツが優先的に表示されるからだ。つまり、多数のフォロワーを抱えるクリエイターでも、その投稿がオーディエンスにしっかり届いているとは限らないのだ」。

ケイト・スペードのTikTok活用は、ユーザー主導である同プラットフォームの性質を十分に理解したものだ。たとえば同ブランドのメインアカウントでは、振付師のディラン・ピアースと歌手のイネス・ナッサラによるダンス動画が公開されているが、キャンベル氏は、この動画もいずれ先述したTikTokで人気のダンサー、トドリック・ホールとケリー・アードマンの投稿のように、多くのエンゲージメントを獲得し、一般ユーザーへ波及するだろうと強調する。なお、このキャンペーンはIikTokのペイド広告メニューのひとつ、ハッシュタグ・チャレンジとも連携している。こうしたアプローチは、E.l.fのようなブランドのあいだで昨今人気なのだという。

ハイエンドなコンテンツは必要ない

インスタグラムでは、多くのブランドが高品質なコンテンツを投稿することでエンゲージメントを高めているが、TikTokでは、舞台裏や非公式のインタビュー、カジュアルな会話を捉えた動画の方がはるかに人気だ。ケイト・スペードで、デジタル・マーケティングCRMのバイスプレジデントを務めるアマンダ・ボップ氏が、米DIGIDIAYの姉妹メディア、グロッシー(Glossy)に語ったところによると、同ブランドでは、TikTokのインフルエンサーたちに、ブランド・キャンペーンの撮影時にメインの撮影とは別にカメラを回してもらうよう、呼びかけているという。これは、新しいキャンペーンやコレクションについて言及しつつ、オリジナリティを盛り込んだコンテンツを世に届けるのに効果的な方法だという。

インフルエンサー主導のTikTok戦略では良くある話だが、ブランドがハイエンドであればあるほど、そのコンテンツはより作り込み度が高くなる傾向がある。たとえばディオール(Dior)は、社内でモデルをフィーチャーして制作した高品質なキャンペーン動画を、定期的にTikTokに投稿。これらの動画は定期的に400万回以上再生されている。

TikTokでファッション、およびビューティ領域のパートナーシップ部門責任者を務めるシーシー・ビュー氏は、「TikTokでは、ほかのプラットフォームで見られるものと比べて、嘘がないこと、本物らしさがあることがもっとも良いパフォーマンスを生む。ハイエンドなコンテンツはウケが良くない」と述べた。「コンテンツのクオリティは決して高くする必要はなく、娯楽性があったり、知識を得られる内容であればよい」。

新規顧客獲得に貢献

ケイト・スペードの親会社、タペストリー(Tapestry)の第1四半期の収支報告は、同ブランドのデジタル事業が大きくオーガニック成長を遂げていることを示している。第1四半期、同社の休眠顧客は15万人以上増加した一方、30万人以上の新規顧客を、TikTokを中心としたソーシャルメディアを通じて獲得した。また、タペストリーの全ブランドのデジタル売上は30%増加したという。

「文化的・社会的状況が絶えず変化するなか、我々はすべてのチャネルにおいて、より消費者中心のアプローチを求められている」とキャンベル氏はいう。「TikTokは我々に、オーディエンスを楽しませつつ、彼らと直接繋がれる方法を提供してくれる。また、視聴者の視点でコンテンツを発信できる点も大きなメリットだろう」。

[原文:Inside Kate Spade’s influencer-driven TikTok strategy] DANNY PARISI(翻訳:塚本 紺、編集:村上莞)