台湾を巡り軍事的緊迫が高まる中、中国で日本への核攻撃を示唆する動画が拡散するなど、日中の関係は岐路に立たされている現状だ。

しかし、2021年10月上旬に行われた米中政府高官の会談後、首脳会談が年内に実現する可能性が浮上したことから、一部では対立緩和への期待も高まっている。米国、台湾を軸に激動する日中関係に、今後どのような運命が待ちうけているのか。

■陸自、南西有事に備え石垣島にミサイル部隊配備

4月に台湾情勢を盛り込んだ日米共同声明を発表して以降、日中関係は急速に緊迫している。日米を含む主要国の介入を「内政干渉」と見なして警告を繰り返す中国に対し、日本は米国との協力のもと、台湾海峡の平和と安定に向けて全力を尽くす姿勢だ。

日本の防衛省は8月、2022年度を目途に沖縄県石垣島に500〜600人規模の陸上自衛隊ミサイル部隊を配備する方針を固めた。沖縄本島・宮古島・奄美大島など4ヵ所にミサイル部隊を配備することで、南西の有事に備える意図だ。晴天下ではわずか110?先に台湾を見通せる与那国島には、2023年までに電子戦部隊が投入される。

万が一中国が台湾を攻撃した場合、これらの地帯は海軍・空軍の進撃ルートになるとされている。日本側は「防衛」という名のもとに、中国軍を迎え撃つ覚悟だ。現実となれば台湾海峡を巡り、沖縄一帯が火の海と化すという最悪のシナリオも考えられる。

■「日本に核攻撃を!」中国で過激な動画拡散

着々と「準備」を進める日本を目の当たりにし、中国側は憤りを隠せない。巨大な影響力をもつソーシャルメディアという媒体を通し、脅迫めいたメッセージを発信する群衆も見かけるようになった。

7月にはオンラインビデオ共有プラットフォーム「西瓜視頻」に、「日本が軍事介入した場合、中国が日本への核攻撃を実行する」という衝撃的な内容の動画が投稿された。動画を投稿したのは、「六軍韜略」と呼ばれる民間軍事評論集団だ。

同プラットフォームが世界で10億人のユーザーをもつ短編動画アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社、ByteDance(バイトダンス)が運営するものであることを考えると、その影響力の大きさが懸念される。また、同社のZhang Fuping副社長は中国共産党(CCP)の組織内部委員会のリーダーとして知られており、習近平国家主席の考えを理解するために定期的な会合を開催しているという。

中国政府はこのような過激な思想の拡散を黙認しているのみならず、挑発的な動きをやめる素振りもない。それどころか、10月上旬には過去最大となる52機の戦闘機を台湾の防空識別圏に派遣するなど、ますます圧力を強めている。

■米中首脳会談、年内実現か?

「もはや、軍事衝突は避けられないのか…」誰もがそう覚悟した矢先に、わずかな希望の光が見え始めたとの見方も出て来た。10月6日にスイスで開催された会談で、米サリバン大統領補佐官と中国の楊潔チ国務委員が「両国は共通の関心事である国際的および地域的問題について、包括的で率直かつ詳細な意見交換を行った」のだ。会談が6時間にもおよんだことから、内容の濃さが窺われる。

中国外務省の発表によると、楊潔チ国務委員は「米中の関係は両国とその国民の基本的利益、そして世界の将来に影響を与える」「米中が協力すれば両国のみならず世界中がその恩恵を受けるが、対立すればひどく苦しむことになる」と指摘した。

改めて米国に「相互の重要な利益と主要な懸念」を深く理解し、「尊敬と平和共存をもって双方に適切な道」を選択するよう求めた。これに対し米国側は「一つの中国の政策の遵守」を表明し、「定期的に重要な問題について協議する」ことに合意したという。中国側は「会談は建設的であり、相互理解を深めるのに役立った」と、おおむねポジティブに受けとめているようだ。

また、「中国側は年内にバイデン大統領と習近平国家主席とのバーチャル首脳会談を実現させることを望んでいる」とAP通信は報じた。

■選択迫られる日本 岸田政権で風向きは変わるのか?

日本においても政権交代を機に、対中政策の風向きが変わる可能性が注目されている。

第100代目となる岸田文雄氏は総選挙前の政策発表で、台湾・香港・新疆ウイグル自治区の問題を含め、断固たる対中政策を進める意向を強調した。有言実行を証明するためには、日本だけではなく世界の平和と共存に向け、引き続き他国と足並みを揃えて立ち向かう強靭さが必要となる。

米中が協議を進めているとはいえ、一触即発の状況であることに変わりはない。中国は米国との関係改善に積極的であると同時に、特に台湾問題を巡る自国の方針を曲げる意思はない。一方、バイデン大統領は就任前から対中強硬姿勢を貫く意思を示すかたわら、紛争を回避するための打開策を模索しているものの、世界平和の秩序を乱す中国の独走を放任するつもりはない。

こうなると、日本に残された選択肢は一つしかない。

■世界の未来は二大超大国の手中に?

米中という世界二大超大国の新たな戦いの火蓋は、切って落とされたばかりだ。日本を含め、二国を取り巻く他国は、世界の未来を今後大きく左右する重要な選択を迫られている。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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